「BIM」で設計段階からインテリアを考える|日本工学院北海道専門学校 建築学科 新岡 輝樹先生にインタビュー!

家具選びやインテリアを考える際に、配置イメージを見ながら考えてみたいと思ったことはありませんか。3次元でインテリアを考える技術として、近年の建築業界では「BIM」という作業工程が注目されています。
今回は、最新技術であるBIMを学べる日本工学院北海道専門学校 建築学科の授業を担当されている新岡 輝樹(にいおか てるき)先生にBIMやインテリア選びについてのお話を伺いました。

2023年にRASIKを運営する株式会社もしもへ入社後、『RASIK LIFE』編集長に就任。自身が持つ不眠症の悩みをきっかけに、寝具について学ぶ。睡眠検定3級。商品の企画・生産・品質管理・販売までを一貫しておこなっている会社の特徴を活かし、実際に商品をチェックしながら記事を作成。フォロワー数50万人超えのRASIK公式インスタグラムでは、商品のレイアウトなども公開中。
公式:インスタグラム
建築業界での幅広い経験を活かした授業

―本日はよろしくお願いいたします。まずは、日本工学院北海道専門学校で教員を務めるきっかけを教えてください。
新岡 輝樹さん(以下、新岡):実は、私はこの学校の卒業生なんです。工業高校の建築科を卒業して海上自衛隊に3年勤めたあと、あらためて建築の世界に戻ろうと思い、日本工学院北海道専門学校に進学しました。当時は就職氷河期だったこともあり、専門学校を卒業して新卒扱いになれば就職に有利かもしれないという考えも少しありましたね。
日本工学院北海道専門学校を卒業したあとは、室蘭市のゼネコンに入社し3年間勤務しました。その後は、登別の木造建築を専門とした会社で7年、さらに市役所で8年間働き、さまざまな形で建築業界に携わっていました。
しかし、市役所で働くなかで「もっと楽しい仕事があるのでは?」と考えるようになりました。そんなときにたまたま母校のホームページで教員募集を見かけ、応募したのが教員になったきっかけです。
教員という仕事をするにあたり、これまでの職場の経験が大いに役立っていると感じています。設計、現場監督、確認申請、積算や発注など建築業界において幅広い分野に触れてきた経験を活かし、社会で必要なさまざまな知識を学生に伝えられていると自負しています。
仕事に対する姿勢を学ぶ2年間

―担当授業ではどのようなことを指導されていますか?
新岡:専門学校の2年で学べることは、社会に出て積み重ねる経験と比較すると非常に少ないです。私は、専門学校での2年間というのは、期限を守ることや仕事への実直さなど「仕事に対する姿勢」を学ぶ場所だと考えています。スポーツ選手も、練習をする体力と基本が身についていなければ、技術を磨くことはできませんよね。建築に関する課題を出す際も、課題の内容とあわせて取り組む姿勢にも注目しています。
また、入学した学生たちには「この学校を卒業すると次は社会に出ることになる」「社会は学校で許されてきたことが許されない世界である」といったことを伝えています。学生を1年目の社会人として扱い、私は会社の係長の目線でクラス運営や課題を見るようにしているんです。
社会に適応するために厳しく指導していますが、一方で今の時代に合わせてどう伝えるかは考えています。難しい課題を出しつつ、学生に寄り添って優しく接することは常に意識していますね。
卒業生から「先生のおかげで社会人として最初の仕事をこなせました」と報告を受けたときは、指導してきたことが間違っていなかったのかなと嬉しい気持ちになります。
インテリアコーディネートにも活用できる新技術「BIM」

―日本工学院北海道専門学校の特色でもある、BIMを扱う授業について教えてください。
新岡:BIM(Building Information Modeling)は、AIを活用した新しい建築のワークフローです。
手描きの時代から近年のCAD(Computer Aided Design)を使った工程まで、今までの図面を描く作業は2次元ベースで進んでいました。CADの導入によって仕事のペースは効率化されましたが、建物を3D化するためには手描きと同じように図面を描く作業が必要だったんです。
対してBIMでは、最初に建物の3Dモデルデータを作成し、それをもとにAIが図面を出力してくれます。また、作成した3Dモデルには柱や梁、窓や壁という概念が存在しており、市販の家具や建材、外装など、実在する製品のモデルを利用できます。
一方で、導入コストや技術者不足の問題があり、建築業界での普及はなかなか進んでいません。そうした課題に着目し、当校では11年前にBIMに関するカリキュラムを開始し、2年の過程のなかで木造住宅、鉄筋コンクリート造、大規模建築物へと段階的に習得します。将来的には設計から施工、メンテナンスまで使用されることを理想として、BIMを扱える若者を建築業界へ送り出しています。
また、BIMはインテリアコーディネートにも活用できると考えています。2年生のなかで、住宅や大規模建築物をBIMで設計する課題へ取り組むのですが、市販の家具や照明器具、建材を3Dカタログから入れ込み、内装を含めて建物1棟をデザインしています。
さらに、3DデータをVR化することで、実際に建物内部を歩いて見て回ることもできるんです。VRで見て回る際は、あらかじめデータを設定しておけば壁紙やテーブルの種類、配置などをワンクリックで切り替えることができます。クライアントが持つ理想を設計の段階から具体化できるのは、BIMが持つメリットのひとつですね。
「家具を作る側」として注目するポイント

―インテリア選びでこだわっている点はありますか?
新岡:デザインのかっこよさ、長く使えるのかといった部分はよく見ていますね。
話が少し逸れますが、私の叔父は建具屋で、学生時代は家具作りのアルバイトをさせてもらっていました。建築業界に進んでからも、クライアントのためにオーダーメイドの家具を設計し、建具屋さんに製作を依頼したこともあります。
一時期は「作る側」として家具に接してきたので、家具を買う際は「どうやって作っているのか」という目線で見てしまいがちですね。加工の仕方、使っている金物などが気になってしまうんです。また、荷重がかかったときの頑丈さを確認するために、裏側のビス止めや接合部の仕上がりを確かめることもあります。
選びやすい通販サイトを作るには?

―RASIKについてどんな印象を抱きましたか?
新岡:私の目線になってしまいますが、家具は安い買い物ではないので、実物が見たい人に向けて寸法のデータや3Dモデルがあるとより選びやすくなるかなと思いました。リビングに新しい家具を置きたいと考えた際、一般の人は数字で大きさを判断するのが難しいので、BIMのように視覚的な案内があればいいなと思いますね。
商品の頑丈さも触って確かめることができないので、荷重テストの結果が身近なものを使った目安で示されていると消費者目線としては嬉しいですね。たとえば棚やテーブルに重りを乗せて、何キロまで耐えられるかを視覚的に示してあげると、家具に関する知識が少ないお客さんでも選びやすくなるかもしれませんよね。
仕事の証を残せるのが建築業界の醍醐味

―最後に、建築業界で働きたいと考えている人へのメッセージをお願いします。
新岡:建築業界は自分のやった仕事が目に見えて残る職種です。自分の建てた建築が人に使われる瞬間というのは、建築に携わる人間だからこそ味わえる気持ちだと思います。仕事の証が残るのは、建築業界の醍醐味ですね。
どの業界でも同じことが言えるかもしれませんが、若いうちは修行です。厳しい日々が続くかもしれませんが、仕事の証を残したいという意識を持って励んでほしいですね。地道に実直に頑張ってほしいと思います。
私は「人生が終わるまで学び」だと考えています。働きだしてからもさまざまなことを学ぶと思いますが、楽しいという気持ちとともに学んでいってほしいですね。
―素敵なメッセージをありがとうございます。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
【日本工学院北海道専門学校 建築学科 新岡 輝樹先生】
建築基準適合判定資格者、1級建築士、1級建築施工管理技士、宅地建物取引士。
日本工学院北海道専門学校建築学科卒、現在は日本工学院北海道専門学校 建築学科の主任を務める。担当授業はBIM設計、建築施工演習、建築法規、構造力学、建築環境、建築積算、住宅構造(木構造)、施工管理技士講座など。