暮らしの質が上がるレイアウトとは?|修成建設専門学校 空間デザイン学科 田中 嘉代先生にインタビュー!
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家具のレイアウトには満足していても、睡眠の質や家族とのコミュニケーションなど、暮らしに関する不満を抱いている人もいるのではないでしょうか。
今回は、修成建設専門学校の空間デザイン学科で「暮らしの質」について授業をおこなっている田中 嘉代(たなか かよ)先生にお話を伺いました。
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2023年にRASIKを運営する株式会社もしもへ入社後、『RASIK LIFE』編集長に就任。自身が持つ不眠症の悩みをきっかけに、寝具について学ぶ。睡眠検定3級。商品の企画・生産・品質管理・販売までを一貫しておこなっている会社の特徴を活かし、実際に商品をチェックしながら記事を作成。フォロワー数41万人超えのRASIK公式インスタグラムでは、商品のレイアウトなども公開中。
公式:インスタグラム
花嫁修業を通してインテリアに興味を持った
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―本日はよろしくお願いいたします。まずは、インテリアに興味を持ったきっかけを教えてください。
田中 嘉代さん(以下、田中):私は学校を卒業してすぐに結婚したいと考えていたのですが、両親に相談したところ「何もできない娘を嫁に出すわけにはいかない」と言われてしまいました。父は万が一に備えて、私にはひとりで子どもを育てられる力を持ってほしいと考えていたようです。
両親からの「結納を全部自分でプロデュースできるレベルになるまで衣食住を勉強してほしい」という言葉を受け、さまざまなスクールに通いました。インテリアを含めた自分の生活を主体的に組み立てられるようになるのは、とても楽しい体験でしたね。
結婚後は東京で日本語学校の教師を務めるかたわら、海外から転勤してきた人や大使館のスタッフを対象とした日本語サロンを開いていました。サロンでは日本文化やインテリアの相談を受けていたのですが、その経験がインテリアデザインの事務所を開く大きなきっかけとなりました。
担当されている授業や「資格塾」について
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―田中さんが担当されている授業について教えてください。
田中:私はインテリアコーディネーター、色彩学、福祉住環境などの授業を担当していますが、福祉住環境も色彩もインテリアの一部と捉えているので、各授業を横断するように教えています。
また、授業内容は時代にあわせて変えるようにしています。最近はまず防災に触れ、続いて睡眠について扱います。現代は眠りが浅い人が非常に多いので、睡眠の質を高めるための知識を重要視しています。
観葉植物やエクステリアもインテリアの一部だと考えているので、植物がもたらす効果に触れることもあります。すべてまとめるのは難しいですが、私が好きなものを徹底的に、その時代に合わせて組み込むようにしています。
また、私は学校内の活動として、民間のインテリア資格の取得を目指す「資格塾」の塾長も務めています。現在はおよそ100人の塾生がいますが、過去の資料や問題集、ビデオ通話などを活用し、ひとりで全塾生を指導できる環境を作り上げました。
資格塾をおこなう最大の理由は、学生とのコミュニケーションです。授業でも資格塾でも、学生との会話を重視しながら指導にあたっています。
「寝室は眠るための部屋」であることを意識する
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―睡眠の質を高めるための部屋づくりについて教えてください。
田中:睡眠の質を高めるには、スイッチの切り替えが大切です。たとえば起床時はカーテンを開けて太陽光を浴び、睡眠のスイッチを切ったうえで一日をスタートするとよいでしょう。朝の日光浴で睡眠のスイッチをオフにすると、深く眠れるようになるというデータも出ています。
スムーズに日光浴をするために、寝室のインテリアはシンプルにするのがおすすめです。ベッドの近くにテレビを置く人もいますが、私は、寝室は眠ることを目的にレイアウトするべきだと考えています。
また、ドアの開閉で生じる風や音で睡眠を妨げないために、ドア近くにはベッドのヘッドボードを配置しないことも大切です。
間仕切りを作らないレイアウトで会話を促す
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―暮らしの質を上げるレイアウトのコツを教えてください。
田中:家具の配置においては動線が重要です。たとえばソファをリビングダイニングの間仕切りとして使うと、ソファに座ってテレビを見る人、テーブルでご飯を食べる人に分かれてしまい、孤立しやすいスペースができてしまいます。
リビングやダイニングのような家族で過ごす場所では、できるだけ間仕切りを作らないことが大切です。ソファをダイニング側に向ければ、食事をしている家族とコミュニケーションを取りやすくなりますよね。授業でも、家庭円満につながる要素を考える必要があると話しています。
部屋の全体像に合う家具を選ぶ
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―家具選びでこだわっている点はありますか?
田中:家具を購入するときは、まず自分の部屋に合うか合わないかで選んでいます。トータルコーディネートとも言われますが、全体像を見ることが重要だと考えているんです。
まずは色彩や素材感が合っているか、次に住環境に合っているかを確認しています。
先日も家電を買ったのですが、以前から目をつけていた商品を見て「色味が若干違うかもしれない」と悩んでしまいました。それでも、自分が納得できなければ欲しかった商品でも買わないようにしています。
新生活をはじめる場合でも、買い替えを見越して安易に家具を選ぶと処分に困ることになります。家具選びは最初から吟味することが大切です。
また、その家具を使う期間も考えるべきでしょう。一人暮らしをはじめたからといってコンパクトなベッドを買ってしまうと、同棲や結婚時に持て余してしまうかもしれません。
RASIKの家具からは爽やかさを感じる
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―RASIKの第一印象を教えてください。
田中:どんな家具が扱われているのかが、ロゴから伝わってきたのが印象的でした。ロゴから伝わるイメージがとても強いですね。シンプルなスタイルの家具が多いのだと、ひと目で伝わりました。
RASIKの家具を見て受けた印象は「シュワさわスタイル」です。シュワっとした炭酸飲料のような、若い人に好まれる爽やかなイメージですね。
加えて、色味への気づかいも感じました。写真の色味をていねいにチェックされている印象です。若い人が好む色味を大切にしていると感じました。
「好き」という気持ちを原動力にとことんやってほしい
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―最後に、インテリア業界を目指す人へメッセージをお願いします。
田中:「好きこそものの上手なれ」です。「好き」を仕事にすることが成功につながっていると学生にも話しています。
学校に入学したばかりのころは、何を仕事にしたらいいかわからない人も多いです。そういった学生には、まずこの2年間で自分の好きなものを見つけようと伝えています。
インテリア業界は人との触れ合いで進んでいく仕事ですから、大変なことももちろんあります。しかし、それを乗り越えて最後に「ありがとう」と言われれば、全部忘れてしまうほどの喜びが生まれます。
そのためには、最後まで仕事をやりきれる原動力になる「好き」という気持ちが大切だと思いますね。好きなことはとことんやれるんです。
―素敵なメッセージをありがとうございます。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
【修成建設専門学校 空間デザイン学科 田中 嘉代先生】
修成建設専門学校では空間デザイン学科でインテリア、インテリアコーディネート、デザイン論概説、色彩学、福祉住環境の授業を担当。